ニューノーマル時代を勝ち抜く!DX をはじめる前の第一歩

経産省の DX レポート以降、デジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた試みが活発化しています。直近は、新型コロナの影響もあり、多くの企業が、ニューノーマル時代の働き方に向けたワークスタイル変革、ペーパーレス化を推進してきました。しかし、DX が成功した企業は少数であり、その効果を実感できていないまま、PoC(概念実証)止まりとなっている企業が多くみられます。
ここでは、これから取り組もうとしている企業に向けて、DX 推進の効果を上げていくために、まず IT 部門がどのような取り組みをすべきかについて触れます。

そもそも DX 推進で目指していることとは?

昨今の DX が目指す先は、大きく分けて二つの意味合いがあります。一つ目は、「ビジネスプロセスの生産性を高めるための変革」であり、例えばコミュニケーションツールの導入や業務のオンライン化により、業務の生産性を上げていくケースが挙げられます。そして二つ目は、「顧客への新たな提供価値の創造やビジネスモデルの変革」です。これは、デジタル上で顧客と新たな接点を持つことでデータを取得し、そこから新たな需要をつかみ、次なる商品・サービスの開発へとつなげていくような仕組み構築が挙げられます。
先の DX レポートの定義によれば、「新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」とされており、本来的には、二つ目の意味合いが強いと言えます。

ビジネスモデルの変革に向けた DX は成果がでていない。その要因は?

既に DX 推進を進めている企業は、成果を上げているのでしょうか? 前項で触れた「ビジネスプロセスの生産性を高めるための変革」については、比較的多くの企業が成果を実感できているようです。
一方で、「顧客への新たな提供価値の創造やビジネスモデルの変革」については、成果が出ている企業が少数にとどまっています。その理由としては、多くのことが考えられますが、進め方が理解されていないことが大きな要因と言えます。ここでは 2つの観点を取り上げます。

  • 事前にビジネス価値が明確にされていない
    DX の目的は、企業がテクノロジーを活用して競争優位性を確保することにあります。そのためには、テクノロジーによってどのようなビジネス価値を実現したいかというゴールを予め明確にした上で進める必要があります。ところが、「新しいテクノロジーを活用して何かできないか?」という思考から出発してしまう、手段の目的化が起きているケースが多く発生しています。結果、DX プロジェクトを立ち上げ、PoC にとりかかることができても、すぐに頓挫してしまうのです。
  • IT 部門へ丸投げされている
    前述の通り、DX 推進で目指す先は、「顧客への新たな提供価値の創造やビジネスモデルの変革」であるため、ビジネス部門と IT 部門が共同で、トライアンドエラーを繰り返しながら、デジタル化の取り組みを行っていく必要があります。ERP や CRM といった、従来の情報の記録や信頼性を重視したシステムとは異なり、事前にシステムの要件を定義することが難しいという特性があるからです。しかし、それが理解されておらず、従来型のシステムと同じように、ビジネス部門から IT 部門へ丸投げする進め方を取り、失敗してしまうのです。

DX で成果を上げていくためにまず IT 部門が行うべきこととは?

DX 推進で成果を上げていくためには、全社的な取り組みとしてビジネス目的と価値を定め、IT 部門とビジネス部門が共同でアイデアを実行に移していく体制・環境づくりがまず必要になります。そのために、IT 部門はどのようなことをまず行う必要があるのでしょうか。
IT 部門はビジネス部門からの丸投げを受けるのではなく、ビジネス部門のパートナーになる必要があります。そのためには、まず、これまで導入・運用してきた社内のシステムやデータの状況について、以下の 5つの観点で可視化・仕分けし、ビジネス部門と共有できる状態にしておくことが必要になります。

  1. ビジネス貢献度・・・システムはビジネス環境に適応しているか?
  2. 機能・・・システムは業務プロセスをカバーしているのか?
  3. データ・・・システムが提供しているデータは正確でタイムリーか?
  4. テクニカル・・・拡張性、保守容易性を織り込んだシステム設計か?
  5. 投資コスト・・・拡張、運用保守にどの程度のコストをかけているか?

その理由は、新たに導入する技術を議論する際に、将来どの IT 資産が連携・活用できるのかについて明確化されていることが議論をスムーズにするからです。既存の IT 資産は、従来のビジネスプロセスや部門毎に最適化されていることが多く、全社的、または部門横断的に DX を推進していく際に障壁となります。
このため、DX の方向性に合わない既存の IT 資産については、刷新・廃棄を検討し、将来活用できる IT 資産をベースとして、ビジネス部門と議論していく必要があるのです。

刷新の方向性(維持、刷新、廃棄)と、その優先順位を決めていくためには、前述の 5つの観点が重要になります。IT を活用する側の観点として、ビジネスや業務への貢献度合い(ビジネス貢献度・機能)と、DX 推進に不可欠になるデータの活用可否(データ)の視点があり、IT を維持・管理する側の視点として、技術面やコスト(テクニカル、投資コスト)の視点があります。これらの観点で、多面的に可視化していくことが重要になるのです。

5つの観点で予め可視化・仕分けしておくことで、ビジネス部門との議論にスピーディに入っていくことができるようになります。ここで重要なのは、有用な IT 資産を積極的に生かしていく意識です。DX 推進においては、AI、IoT といった最新技術の活用ばかりに目を奪われがちですが、価値ある社内のIT資産をビジネス部門にきちんと伝え、活用イメージを持ってもらうことも IT 部門の重要な役割になります。

DX 推進を成功させるためには、自社のシステムやデータの棚卸するところからはじめることです。まずは、上記に記載した 5つの観点で可視化・仕分しましょう。

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